「事業継続マネジメント(BCM)」とは、事業の継続を脅かす重大な影響(例えば、災害や事故、致命的な人的ミスなど)に対し、事業の*レジリエンシーを向上するための仕組みです。
現在では、多くの業務はIT化されており、*ICTの継続なくして事業継続は成り立ちません。このような背景を受け、事業を支えるICTの継続性の管理に特化した、「ICT継続マネジメント」という仕組みが誕生しました。
ICT継続マネジメントは、必要なICTと、ICTサービスについて、経営陣の要求・合意の下で復旧時間や復旧レベルなどの目標を決定する仕組みと、その目標に向けて、レジリエンシーを向上するための仕組みを提供します。
*レジリエンシー ・・・事業中断の脅威の影響を軽減する力と、影響によって中断された事業を速やかに再開する力のこと
*ICT ・・・Information and Communication Technology の略。 情報通信技術のこと。
なお、 ICT継続は、事業継続の一部であることから、ICT継続マネジメントとBCMは共通の活動によって実現されます。
出典:社団法人 日本コンピュータシステム販売店協会 「中堅・中小企業のITサービス導入実態とリスク対策に関する調査研究」
例:災害発生時における、ICTサービスの中断の影響
・災害により保有データを失った企業の60%は、6ヶ月以内に操業停止に追い込まれています
・災害により10日間以上のデータセンター停止に遭った企業の93%は、1年以内に倒産しています
(調査:National Archives and Records Administration, NARA ※いずれも米国における統計)
経済産業省「ITサービス継続ガイドライン」2008年9月
事業継続の阻害要因としてIT関連のトラブルを挙げる企業が多いことから、ITサービス継続の枠組みと具体的な実施策をガイドライン化。
総務省「地方公共団体におけるICT部門の業務継続計画(BCP)策定に関するガイドライン」 2008年8月
地方公共団体のICT部門を対象にした、BCPのガイドライン。BCPや各種様式のサンプルもあり、民間企業も参考とすることができる。
・目的・適用範囲の設定
・ICT継続マネジメント方針の確立
・ICT継続マネジメントに必要な経営資源の提供
・ICT継続マネジメントの役割、責任、力量及び権限の明確化
・事業インパクト分析 (BIA) とリスクアセスメント (RA) の実施
・ICT継続マネジメント戦略、リスク対応策の策定
・ICT継続計画、インシデントマネジメント計画の策定
・ICT継続マネジメントの演習の実施
・ICT継続マネジメントの取組みの定期・臨時レビューの実施
・内部監査とマネジメントレビューの実施
・継続的改善
ICT継続マネジメント活動を通じて、一般的には以下の内容を含む文書・記録が作成されます。
対応する活動 |
アウトプット(文書・記録) |
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ICT継続要求事項の特定 |
●事業インパクト分析 (BIA) の結果と、ICT継続要求事項
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ICT継続マネジメント戦略の策定 |
●ICT継続マネジメント戦略
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ICT継続のための対応策の導入 |
●ICT継続計画
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ICT継続マネジメントの運用 |
●ICT継続マネジメントの演習のプログラムと記録
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